口腔外科医としての研究生活1
やがて口腔外科への入局と同時に大学院にも入学し、歯科医師としての生活がスタートしました。口腔外科には顎の骨折や受け口、顎関節症、歯科心身症など多種多様な症状を抱えた患者様が来られ、各種の検査や治療を行っています。ただし、日々の診療体制は外来入院を問わず口唇裂・口蓋裂と口腔ガンの手術を中心に回っていました。その中で私は口腔ガンの診療グループに入り、大学院の研究テーマとして「口腔ガンの放射線治療」に取り組みました。
口腔ガンの手術は、歯科領域の中で最も規模の大きな手術となります。顎の骨や舌、唇、頬を切除しますが、ガンが拡がっている場合はのど(咽頭)、副鼻腔、顔面の皮膚や骨、眼球、頭蓋骨にまで施術が及ぶ場合があります。また、ガンに侵されている部分に加えて首のリンパ節や筋肉、血管を切除するケースもあります。そんな手術を行うと、当然のことながら顎や舌が欠損するため、腰の骨や胸の筋肉、腕の皮膚などを移植して再建を行うことになります。手術時間が12時間を超えることも珍しくなく、手術の範囲によっては眼科や脳外科の医師の参加を要請するケースもありますが、多くの場合は3~6人の口腔外科医が手分けをして行います。
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