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療歯科17

疾病利得

病気を患うことは、言うまでもなくつらく苦しい経験です。誰でも早く元気な体に戻りたい、元の生活を取り戻したいと切望することでしょう。病気になりたい人なんてどこにもいないはずですから。

ところが実際のところ、「疾病利得」は存在するのです。つまり、体が自然に病気になりたいと望み、その通り病気になってしまう、そしてそのままいつまでも病気が治らない。この不思議な現象をひも解いてみると、病気になることによって得られる利益があるため、本人は無意識のうちに病人を続けているという状態です。

口腔顔面痛のケースを例に挙げて説明しましょう。仕事が忙しい、人間関係がうまくいかないなど、何か問題があると決まって上顎の奥歯から頬骨の当たりが痛む患者さんがいます。しかし、エックス線写真などでいくら歯や骨を調べても異常は見当たらず、鎮痛剤も効果を発揮しません。

本人は痛みがつらいため仕事もままならず、早退したり休みを取ったりします。すると周りにいる家族や同僚が心配し、あれこれといたわってくれますが、仕事から離れて休養しているうちに痛みも自然になくなっていきます。そのような痛みが年に何回か繰り返されるのですが、そのたびに原因不明のままですから、患者さんの苦しみは続きます。

種明かしをすると、この患者さんは仕事を休んで休養したことにより、体が楽になって痛みが治まったわけではありません。休暇を取ったことにより、仕事のつらさや人間関係の煩わしさから逃れることができ、心が休まったのです。周囲からいたわってもらえたこともまた、症状の改善に役立ちました。

このように痛みを抱えることによって元々あった問題から逃れることができ、病気になることによって得られる利益があったのです。これを「疾病利得」といい、通常本人は意識せぬまま、無意識のうちに得られる利益を指します。病人を続けるとこのような利益も維持できるため、いつまでたっても回復しない場合もあります。正確にいうと、本人の表層意識は一日も早く治りたいと願っているにもかかわらず、無意識下では病気が治ることを恐れている状態です。

病気になることにより、仕事や人間関係の悩みから逃れることができる利益を「第一次疾病利得」といいます。また、病気を患うことで周囲の人間にやさしく接してもらえる利益を「第二次疾病利得」といいます。

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