器具の衛生管理
口は常に外界と接する体の入り口に当たるため、さまざまな病原性を持つ微生物が棲息しています。つまり、口腔内の治療を受ける際には器械や器具に留まらず、術者や介助者からも病原菌が感染する危険性があるのです。そこで重要となるのが、感染の防止に有効な手段を用いて滅菌を行うことです。具体的には全ての器具を滅菌し、ディスポーザブル(使い捨て)の材料を使用します。
滅菌とは微生物を完全に除去または撲滅し、無菌状態をつくることです。器具の滅菌にはオートクレーブという機械を使用し、高温・高圧(135℃・2気圧で滅菌3分、乾燥30分)の水蒸気によって細菌を死滅させる方法、高圧蒸気滅菌法を行います。
当然のことながら、全ての器具を滅菌するためには設備やスペース、時間、人手が必要となります。従って、作業中に器具が不足しないよう同じ器具を大量に買い揃えておく必要がある点やディスポーザブル用品の使用などにより、滅菌には多大なコストが費やされるのです。
前述の通り、医療機関にとって滅菌は物心両面で大きな負担となるにもかかわらず、完璧な滅菌を実践したところで1円の収入にもなりません。現行の健康保険制度では、滅菌に対していかなる報酬も与えられていないからです。そのため滅菌を適当に済ませてコストを節約する医院が後を絶たず、逆に滅菌をきちんと行う医院は少数派なのです。
しかしながら「滅菌をケチる」歯科医院の趨勢に同調することは、医療機関として自殺行為に当たります。つまり滅菌を疎かにするとたちまち院内感染のリスクが増し、患者様に重大な不利益をもたらす可能性が高くなるのです。これでは一医療機関、一医療人として倫理的、道義的責任を放棄したも同然です。
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