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指定難病の1つであるIgA腎症は放置すると人工透析が必要となる難治性の病気で、日本には約3万3千人の患者さんがいます。IgAは唾液中にも分泌されている免疫抗体の一種で、病原体から体を守る働きがあり、糖鎖異常IgAという異常なIgAが作られた場合は、体が異物と見なして攻撃します。その際に免疫抗体であるIgGがこの糖鎖異常IgAに結合し、免疫複合体ができます。この免疫複合体が腎臓の中の糸球体に溜まり、炎症を起こした結果、IgA腎症が発症します。
IgA腎症になると、血尿、蛋白尿、浮腫、血圧上昇が生じ、20年ほどで30~40%の患者さんに人工透析が必要となります。IgA腎症に対しては、扁桃摘出術、ステロイドパルス療法が推奨される他、レニン・アンジオテンシン系阻害薬が試みられています。
虫歯菌であるミュータンスレンサ球菌、すなわちストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)は、血清型分類によりc、e、f、kの4種類に分類されます。細菌が人間の血液成分の1つである血清と接触すると、凝集反応などさまざまな防御反応を示します。この反応の違いによって細菌を分類する方法が血清型分類です。ストレプトコッカス・ミュータンスの多くはc型ですが、少数派(5%以下)のf型、k型はコラーゲン結合能を持ちます。
コラーゲン結合能を持つものをCnm陽性ストレプトコッカス・ミュータンスといい、IgA腎症の患者さんではCnm陽性ストレプトコッカス・ミュータンスが健常者よりも多く観察されています。動物実験ではCnm陽性ストレプトコッカス・ミュータンスがIgA腎症を惹き起こすことが判明しています。
このように虫歯菌とIgA腎症との関係性が明らかになり、お口の中を清潔に保つことがIgA腎症の進行防止に役立つと考えられるようになってきました。
Naka S, Matsuoka D, Misaki T, Nagasawa Y, Ito S, Nomura R, Nakano K, Matsumoto-Nakano M. (2024) Contribution of collagen-binding protein Cnm of Streptococcus mutans to induced IgA nephropathy-like nephritis in rats. Commun Biol. 7: 1141, 2024.
Misaki T, Naka S, Nagasawa Y, Matsuoka D, Ito S, Nomura R, Matsumoto-Nakano M, Nakano K. Simultaneous presence of Campylobacter rectus and cnm-positive Streptococcus mutans in the oral cavity is associated with renal dysfunction in IgA nephropathy patients: 5-year follow-up analysis. Nephron. 147: 134-143, 2023.
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