|
本来、心臓は無菌状態です。しかし、何らかの理由により心臓弁に傷が付き、さらに何らかの理由から血液中に細菌が侵入して流れる、というような悪条件が重なると細菌が心臓弁に棲みつき、心臓に感染が生じます。これが感染性心内膜炎で、大変危険な状態であるといえます。
感染性心内膜炎に罹患すると、高熱、頻脈、疲労といった症状が発生し、心臓弁の損傷により心臓の働きが低下して心不全に至る場合があります。また、血栓ができやすくなり、生じた血栓が脳に流れ着いて脳の血管を塞ぐと、脳梗塞が生じる可能性があります。感染性心内膜炎を治療しないで放置するとほとんどのケースで死に至りますが、治療自体の難易度が高く、長期間の入院や心臓の手術を余儀なくされることもあります。
虫歯菌であるミュータンスレンサ球菌、すなわちストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)は、血清型分類によりc、e、f、kの4種類に分類されます。細菌が人間の血液成分の1つである血清と接触すると、凝集反応などさまざまな防御反応を示します。この反応の違いによって細菌を分類する方法が血清型分類です。ストレプトコッカス・ミュータンスの多くはc型ですが、少数派(5%以下)のf型、k型はコラーゲン結合能を持ちます。
何らかの理由により細菌が血液中に侵入して菌血症が生じますが、むし歯や歯周病がその一因となるケースが多く見られます。むし歯が深部まで進むと歯の神経(歯髄)に細菌が侵入し、歯髄の血管に入った細菌が血流に乗って全身を駆け巡ります。また、歯周病が進行すると歯肉が傷ついて出血し、この傷口(歯肉内縁上皮)から細菌が血液中に侵入して全身を駆け巡る事態となります。
このように虫歯菌とIgA腎症との関係性が明らかになり、お口の中を清潔に保つことがIgA腎症の進行防止に役立つと考えられるようになってきました。
むし歯菌(ミュータンス菌)の10~20%が、コラーゲンと結合する能力を有します。具体的にはコラーゲン結合タンパクを持つむし歯菌がコラーゲンやフィブリノーゲンと結合可能で、この能力を持つむし歯菌が血液中に入って心臓弁周辺に到達すると、むし歯菌と結合したコラーゲンが傷口の血管内皮細胞に付着します。このむし歯菌と結合したフィブリノーゲンが血小板を凝集させ、心臓の血管に疣種を作ることにより細菌が増殖を続け、感染性心内膜炎を惹き起こすことになります。
Nomura, Ryota, et al. "Contribution of the interaction of Streptococcus mutans serotype k strains with fibrinogen to the pathogenicity of infective endocarditis." Infection and immunity 82.12 (2014): 5223-5234.
https://journals.asm.org/doi/pdf/10.1128/iai.02164-14
Otsugu, Masatoshi, et al. "Contribution of Streptococcus mutans strains with collagen-binding proteins in the presence of serum to the pathogenesis of infective endocarditis." Infection and Immunity 85.12 (2017): 10-1128.
https://journals.asm.org/doi/pdf/10.1128/iai.00401-17
|