歯から1cm離れた粘膜がプクッと膨らんでくることがあります。痛みはないことが多く、いつの間にか出来物ができているのです。いつからできたのかもわからず、歯肉にできる腫瘍、そうです、「歯肉ガン」ではないかと心配になります。当クリニックにも歯肉ガンができたのではないかととても怯えて来院される患者様が頻繁に来られます。
このような症状があってもほとんどの場合はガンではありません。この出来物の正体は「フィステル」という病変で、これは虫歯が進行して顎骨の中に進行することから生じます。虫歯が進行すると、歯の根の先端部の周囲の顎の骨が溶けて丸い病変が生じます。この病変を「根尖病変といいます。根尖病変には「歯根のう胞」「歯根肉芽腫」「根尖膿瘍」がありますが、いずれも細菌が根尖部の骨内に棲息する状態です。むし歯の状態が悪化すると根尖病変内の細菌数が増え、炎症反応が生じて膿が溜まります。膿が溜まって根尖病変内の圧力が高まると、周囲の歯肉が盛り上がり、破れて膿が出てきます。この状態がフィステルであり、見た目は腫瘍のように見えますが、本当は細菌感染による炎症なのです。
このため、フィステルや歯根のう胞などの根尖病変に対してはむし歯の治療が必要なのです。具体的にはむし歯を削り取り、歯の根の中を清掃拡大する感染根管治療(歯内療法)を行います。これらの治療により病変が消失することがありますが、治りきらない場合もあり、その成功率は概ね5分5分の割合です。治りきらない場合は歯根端切除術、意図的再植術、抜歯などを選択します。
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