4学会合同学術大会において研究発表を行いました
2023年9月22日~24日の3日間、第43回日本歯科薬物療法学会・第36回日本口腔診断学会・第33回日本口腔内科学会・第32回日本口腔感染症学会(略称:4学会合同学術大会)が宇都宮市で開催され、23日午前に口演発表を行いました。
シェーグレン症候群の口腔症状:う蝕や歯周病が好発しやすいのか
樋口均也
医療法人慶生会 ひぐち歯科クリニック
[目的]
シェーグレン症候群は唾液腺と涙腺を主な標的臓器とし、全身の腺組織などを攻撃する自己免疫疾患である。その主症状は唾液分泌量減少によるドライマウスと涙液分泌量減少によるドライアイであり、口腔症状にはドライマウスに伴う味覚の異常や口腔粘膜の痛み、口臭などがある。唾液には抗菌作用があるため、唾液分泌量が低下するとう蝕や歯周病といった細菌感染由来の疾患が増加することが予想される。しかし、本邦におけるシェーグレン症候群患者の口腔症状に関する報告は少なく、中でもう蝕や歯周病に関する報告はさらに乏しい。本研究ではシェーグレン症候群患者の口腔内の症状や検査結果を調査すること、う蝕や歯周病が増加するのかを調べることを目的とした。
[対象と方法]
2005年8月から2023年5月までの間にひぐち歯科クリニックを受診した患者を調査対象とした。カルテ記載をもとにし、当院で検査を実施してシェーグレン症候群と診断した患者を抽出した。その診断には米国リウマチ学会議―ヨーロッパリウマチ学会による一次性シェーグレン症候群分類基準を用いた。調査項目は性別、年齢、主訴、症状、無刺激唾液分泌量、刺激唾液分泌量、涙液分泌量、カンジダ培養検査、DMF歯数、歯周ポケットの深さとした。
[結果及び考察]
シェーグレン症候群患者は男性3名、女性60名の計63名であり、平均年齢60.5歳であった。主訴は口腔乾燥27名、口腔粘膜痛15名、口臭5名、顎下腺腫脹3名、などの順であった。また、口腔乾燥63名、眼症状46名、口腔粘膜痛37名、口臭31名、味覚の異常24名、などの症状がみられた。無刺激唾液分泌量は中央値0.03ml/分、刺激唾液分泌量は中央値0.4ml/分、シルマーテストは中央値6.5㎜、カンジダ培養陽性者は19名であった。DMFの合計歯数は中央値17(D 0、M 2、F 15)、歯周ポケットは中央値3.0㎜であった。
平成28年度歯科疾患実態調査の平均DMF歯数は17.1本であり、本研究対象のシェーグレン症候群患者群のう蝕罹患率は高くなかった。同調査では歯周ポケットの深さの平均値は示されていないが、60~64歳で4㎜未満の歯周ポケットがみられる者は38.7%であることを考慮すると、本研究対象のシェーグレン症候群患者群は歯周病が進行していないと推測された。
[結論]
当院で診断したシェーグレン症候群患者63名全員に口腔乾燥がみられたが、う蝕や歯周病の増加は見られなかった。
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