下顎骨内部に埋め込むインプラントは長ければ長いほど、また太ければ太いほど安定し、噛む力に対して耐え抜くことができます。たとえば前歯部の4本は最も細い歯なので、標準サイズ(カムログインプラントの場合は直径3.8mm)か細いサイズ(同3.3mm)が適当ですが、噛む力が強い犬歯や臼歯の場合は5mmや6mmの太いサイズで、かつ長いものを埋入することが望ましいといえます。
ところが実際には、歯を失った部分の骨はやせ細っていることが多く、太いインプラントの埋入に耐えられないケースが多くみられます。その理由は、やせ細った状態で何とか持ちこたえている部分にインプラントを埋入すると、不自然な傾きや本来の歯の位置とのズレが生じてしまうからです。そのような場合には、骨移植術やスプリットクレスト法などの骨造成術を用いて対応します。 >> 骨造成術の詳細はこちらをクリック
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前歯部傾斜埋入
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臼歯部傾斜埋入
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またインプラントの長さを決める場合には、「下顎管」の存在を考慮に入れる必要があります。下顎臼歯部(4番から8番まで)の骨の中には下顎管という管が後方から前方へと走行しており、その中に下歯槽動脈と下歯槽静脈、下歯槽神経が入っています。インプラントを埋入する際、誤って下顎管を傷つけてしまうと動脈性の大出血が生じるうえ、同時に神経が麻痺する事態となります。このとき、骨の中の動脈性の出血は何らかの手段で止めることができたとしても、一度傷ついて麻痺した神経は回復するのに時間がかかるため、長期にわたって歯や歯肉、下唇の感覚が鈍くなってしまうのです。同時に、しびれが切れた時のようにピリピリとした過敏な状態に陥るケースも少なくありません。
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下顎管損傷 |
やがて、神経が切れていない限り感覚は除々に回復しますが、ピリピリ感だけはいつまでも残ったり、逆に強くなる場合もあります。また、ピリピリ感に加えて灼けるような感覚や「神経障害性疼痛」という難治性の痛みが生じるケースもあります。
>> 神経障害性疼痛の詳細はこちらをクリック (姉妹サイトへリンク)
このような危険性を鑑みたうえ、下顎管まで届かない範囲でインプラントの長さを正確に決定する必要があります。従って、インプラントの手術前にはインプラント長計測用のステントという装置を作製してエックス線撮影を行い、ミリ単位で最適な長さのインプラントを選択することになります
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ステントを付けてエックス線撮影
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ステントを付けてインプラントを埋入
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メタルボンドクラウンの装着
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