高齢者は食欲不振傾向がある
大阪大学と東京都健康長寿医療センター研究所が高齢者を対象としたSONIC研究を実施しました。年齢を重ねるにつれて食が細くなるといわれますが、この調査でも後期高齢者の12.4%が食欲不振を訴えました。食欲不振は低栄養状態を引き起こし、フレイル(虚弱)やサルコペニア(加齢性筋肉減弱症)、ロコモ(運動器症候群)につながって、健康状態の維持が困難になります。
低栄養の要因
高齢者の低栄養状態を引き起こす要因としてさまざまなものがあります。
- 社会的要因
独居や貧困
- 精神心理的要因
認知症やうつ
- 加齢
味覚や嗅覚の異常
- 疾病要因
がん、炎症、疼痛、消化器疾患、薬の副作用
口腔疾患、摂食嚥下障害
咬合力の低下が低栄養を引き起こします
高齢者の低栄養状態にはさまざまな要因が考えられます。大阪大学高齢者歯科学分野教授の池邊一典先生らがSONIC研究の結果を分析したところ、低栄養の要因は、経過年数、女性、最大咬合力の3つがキーワードとなりました。経過年数とは追跡期間が長くなるほど(年を取るほど)低栄養になりやすいということです。また、女性は男性よりも低栄養に陥りやすい傾向が見られました。3つ目の最大咬合力こそが重要なポイントで、噛む力が落ちると低栄養になりやすいことが判明したのです。つまり、噛む力の維持が健康そのものに直結するということです。噛む力は、胃腸の調子や生活環境、精神状態よりさらに健康長寿にとって必要不可欠な能力であるともいえるでしょう。
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