本田先生の業績は偉大ですが、その理論がどこまで正しいのか、その効果がどの程度のものなのか、科学的に証明されたわけではありません。また、ほんだ式口臭治療自体も年月が経つにつれ徐々に新しい方法を取り入れて変化していっています。口臭治療を発展させるためには口臭治療にかかわる医療関係者が集まって議論し、研究を進めていく必要があります。この目的のために本田先生や大学の口臭研究者たちによって設立されたのが日本口臭学会です。
日本口臭学会の現会長は愛知学院大学歯学部の福田教授です。その下に理事や評議員などがいて会長の仕事を支えています。学会には事務局の他にガイドライン委員会や編集委員会などの委員会があり、定期的に委員が集まって仕事をしています。評議員である私が所属するのは倫理委員会で、会員の研究活動に倫理的な問題がないか点検する役目を負っています。
スタップ細胞のねつ造疑惑や開発中の薬のデータ偽造疑惑など倫理的な問題が報道されることがあります。薬の開発には巨額の資金が絡みますし、スタップ細胞のようにノーベル賞級の研究として研究者の功名心を駆り立てるようなものもあります。このような場合には倫理的な問題には目をつぶって不正に手を染めたり、患者に害を及ぼしたりする場合もあるのでしょう。
幸いなことに口臭研究や口臭治療は零細な分野であり、大金が絡むこともありません。倫理的な問題が絡む要素はなく、倫理員会が活躍する機会は巡ってこないでしょうが、倫理委員会を設置するのは世の流れです。大学病院や大規模な総合病院、学会には倫理委員会が置かれるようになっています。
口臭治療は経営面からみると実は不採算部門です。医療機関は営利企業ではないので、採算性で治療するかどうかを決めたりはしません。求められ、対応する能力があれば、採算は意識せずできるかぎり要望にこたえる努力をします。その結果、患者さんの不安が解消し、出来なかったことができるようになればそれ以上のことはありません。
学会での活動も時間を取られ、出費も多く、ソロバンには合いません。研究を進めることによってより良い治療を患者さんに提供できること、学会員をサポートすることで多くの患者さんに福音が届けられることを励みとして務めを果たしています。
(2015年11月10日)
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