40歳 女性
主訴
口臭が生じていて、周囲の人と話す時にいつも心配になる
現病歴
15年前に母親に「口が臭い」と言われた。自分では臭いがわからなかったが、それ以来、自分には口臭があるのだろうと密かに悩むようになった。その後は母親に指摘されることはなかったが、自分を気遣って臭いがしていても言わないのだろうと推測し、悩み続けた。口臭を心配するようになってからは普通に人と話をすることができず、積極的な行動ができずに全てに消極的になってしまった。3ヶ月前に姉に口臭を指摘され、2ヶ月前には夫にも指摘された。口臭の心配が続いているため、口臭の改善を求めてひぐち歯科クリニックに来院した。
既往歴
数年前より花粉症に罹患しており、毎年春になると鼻汁や目の痒みが生じていた。
現症
患者は会話時に相手が手で口を押さえることや嫌な顔をされることがあることを特に気にしていた。このような仕草は相手が患者の口臭に反応して起こしており、口臭が相手にも分かっていることを示すサインだと考えていた。口臭の自覚や他人の仕草への不安感から、患者は素直に人と話ができない状態に陥っていた。患者が訴える口臭とは臭気そのものではなく、口が乾く感じやネバネバする感じのことであった。体格は中肉中背であった。齲蝕は認めず、軽度の歯肉の炎症を認めたが、口腔清掃状態は比較的良好であった。
口臭関連検査 口臭官能試験で口腔内ガス、呼気ガスのいずれにおいてもはっきりと分かる生臭い臭気を認め(表5)、口臭機器測定でも高い測定値であり、バナテストでは舌背部に陽性反応を認めた。唾液検査では分泌量が少なく、白濁、黄濁、沈殿、香ばしい臭いを認めた。
診断
- 口腔、咽頭由来の測定者が感知できる口臭
- 唾液分泌量低下による口腔乾燥とネバネバ感
- 唾液性状悪化による口腔内感覚の異常
- 口臭の自覚や他人の仕草への不安からくる口臭不安
治療経過
上記診断にて表1に掲げる各種の治療を開始した。2回目の来院時には「唾液がサラサラするようになってきた」とのことであった。3回目の来院時には口腔乾燥感やネバネバ感は消失し、他人の仕草も目にしなくなったとのことであった。治療後の口臭関連検査では口臭官能試験、機器測定のいずれにおいても各項目の値が減少していた。また、唾液分泌量が増加し、黄濁、唾液の臭気が消失していた。以上の結果より口臭は自覚的にも他覚的にも改善したと判断し、定期管理へ移行した。
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表5 1~3回目の測定結果
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