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考察9-1

9.口臭治療の実際

口臭患者の悩み・不安を分析した結果、主に三つの連鎖する悩みがあることが判明した。一つ目は自己の口臭を認めてもらえないという悩み、二つ目は口臭の原因がわからないという悩み、三つ目は口臭をどうやってなくせばよいのかわからないという悩みであった。そのような患者に対する治療に際しては「受容」→「認知」→「保証」→「支持」の各ステップを的確に押さえていく必要があった36)。その上で、臭気を発生させる嫌気性菌の制御、生理機能低下への対応、口臭に対する不安への対応を行い、一定の成果が得られた。

我々の治療方針として口臭治療の回数は最大で3回としている。回数制限を設けることで治療ゴールが明確となり、患者にとっても治療者にとっても治療を進めやすいという経験則があるためである。もちろん、1回目や2回目で患者の不安が解消し、患者が治療継続を求めない場合はその意向を尊重してメインテナンスに移行している。

1)口腔嫌気性細菌の制御

 口臭の最大の原因は口腔嫌気性細菌の出す口臭ガスである1)。そのため嫌気性菌の繁殖を制御することが重要であり、正しい含嗽法やブラッシング法、舌清掃法を指導する必要がある37)38)39)。口臭対策としてイソジンガーグルRやリステリンRといった消毒効果の高い含嗽剤を用いると、成分中のポピドンヨードやエタノールが粘膜を傷害し、口腔生理機能を低下させてしまう恐れがあると著者らは考えている。このため、口腔乾燥時や飲食後、喫煙後の含嗽を水で念入りに行うようにも指導している。

口臭患者はブラッシングを頻回に長時間励行している場合が多く、オーバーブラッシングによる歯肉の損傷が認められる者もいた。そのため、全ての患者に対してブラッシングの回数と圧力を制限し、粘膜の損傷を防止するように指導している。舌清掃についても磨き過ぎる恐れがあるため、ブラシ等の清掃器具の使用は禁止している。著者らは舌背を口蓋皺壁に擦り付けたり、ガムを舌の上で転がしたりして、清掃する方法を指導している。

口腔嫌気性細菌を制御する化学的製剤として、塩化セチルピリジウム(CPC)、グルコン酸クロルへキシジン(CHX)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、ラクトフェリン、クマザサエキス、塩化亜鉛、二酸化塩素などが配合されたオーラルリンスが製品化されている39)40)41)42)43)44)。前述したイソジンガーグルRやリステリンRを生理的口臭への対策として使用することは適当ではない。これらの製剤の中で、特に二酸化塩素製剤は効果持続時間が長く44)、粘膜に対する為害作用がないという利点を有しており、生理的口臭を抑制するのに適している。著者らは代表的な二酸化塩素製剤であるプロフレッシュCLRを用いて、朝食後と就寝前に含嗽するように指導している。
また、口腔内常在菌であるStreptoccocus salivariusのプロバイオティクス製剤を用いて嫌気性菌の繁殖を抑制する治療法も症例に応じて併用している45)46)。

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