3.口臭患者が抱える心理、社会的な問題について
口臭は眼に見えるものではなく、患者自身が自己の口臭を客観的に評価することが難しいという性質を有している。このため、患者は常に「周囲の人間は私の口が臭いと思っているのではないか」「私に口臭があることがバレているのではないか」という不安を抱き続けていた。口臭を指摘されたことがなくても、「皆気付いているが、遠慮して(気使って)黙っているのではないか」と疑心暗鬼になっていた。自己の口臭を感じていたり、ネバネバ感などとして感じていたりするために、「周囲も気付くはずだ」と思い込んでいた22)。
このような心理状態のため、精神医学的には口臭症を「口臭恐怖症」という概念で捉えて22)23)、DSM-IVによる不安障害の下位分類である「特定の恐怖症」の中に口臭症を位置付けることができる。また、口臭という審美的な身体的欠陥に関する恐れという観点から、身体表現性障害の下位分類である「身体醜形障害」の中に口臭症を位置付けることもできる。中には、客観的に感知できる口臭がないにもかかわらず、「自分の口臭のために、部屋に入った瞬間に窓を開けられる」「自分に近付く人は皆口を揃えて臭いとつぶやく」といった妄想を持ち続ける場合があり7)8)、このような症例は「妄想性障害」に相当すると考えられた。
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