口臭の原因は主として嫌気性菌が産生する揮発的硫黄性化合物である1)2)。歯科治療を求めて来院した患者に口臭が感知されることがあるが、ブラッシング指導などで口腔衛生状態が改善されると口臭が軽減することが多い3)。家族などに口臭を指摘されたために口臭治療を求めて受診した患者は、口腔衛生状態が不良な場合が多く、その改善によって口臭が軽減する4)。一方、口臭を自覚する患者も少なからず存在し、このような患者の口腔衛生状態は総じて良好な場合が多い。他覚的に口臭を感知できず、本人のみが口臭を感じている場合も少なくない。このような場合にはブラッシング指導、歯石除去といった歯周治療を行っても口臭は改善せず、逆にオーバーブラッシングによって歯肉が傷つき口臭を増強させることもある。ホームページなどで口臭外来を名乗ると後者の口臭を自覚する患者が多く来院する。このような患者に対しては、従来歯科で行われていたブラッシング指導などでは改善できず5)、対応に苦慮することとなる。
自らの口臭を感知する自己臭症と、他覚的な口臭を認めるいわゆる他臭症では病態が異なる。前者では口臭の程度が軽く、口腔衛生状態が良好な生理的口臭である場合が多い。また、ドライマウスや食いしばり、アレルギー性素因、月経周期6)、心理・社会的要因7)8)9)が関与していることが多く、病態が複雑である。このため、診査項目が多岐に渡り、治療も多面的に複合して実施する必要がある。著者らは口臭に対する包括的治療を提唱し、実践しており、今まで治療困難とされてきた自己臭症患者の生理的口臭に対しても一定の成果が得られている。その治療方法と治療結果を報告する。
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