第3回 日本口臭学会において研究発表を行いました
2012年7月7日・8日の2日間、第3回 日本口臭学会が東京で開催されたなか、8日午後に口頭発表を行いました。
口臭症患者における舌診所見の分析
- 樋口均也1)、本田俊一2)3)、辻孝雄3
- 医療法人慶生会 ひぐち歯科クリニック1)、
- 医療法人 ほんだ歯科2)3)、藤田保健衛生大学医学部3)
中医学の診断や治療は西洋医学とは全く異なったアプローチで行われる。即ち、個々の疾患や症状ではなく、気血水や五臓の病理(一部体質も考慮に入れる)から証を決定し(弁証)、治療方針が決定される(治則と治法)。弁証の判断材料として重要視されるのは舌の望診、即ち舌診と問診である。中医学では舌は内臓の状態を映し出す鏡と捉えられていて、舌の状態を日常的に観察できる歯科医にとって特段の支障がなく弁証することが可能である。
口臭症は口腔や咽頭の生理機能の異常から引き起こされる場合が多く、自律神経機能やストレス、水分代謝、栄養状態、消化器や呼吸器の疾患とも関連する場合がある。舌診を行うことにより、これらの異常を推測することが可能であり、診断・治療の助けとなる。本研究では口臭症患者の舌診所見を集計し、分析・検討を加えた。
2009年7月から2012年6月までの間に医療法人慶生会ひぐち歯科クリニックを受診した162名の口臭症患者を調査対象とした。舌診は舌質、舌苔の各種診査項目を専用の記録用紙に記載した。各診査項目の陽性率は、舌苔の剥落9%、胖大61%、裂紋54%、歯痕55%、点52%、刺30%、瘀斑46%、瘀点15%、舌下静脈の怒張43%であった。
舌の所見が主にみられる部位について経絡弁証を用いて臓腑ごとに分けたところ、脾胃44例、肝胆41例、心肺34例、腎膀胱28例であった。舌診所見を気血水・八衡弁証を用いて分類したところ、気虚37例、気滞22例、血虚18例、血瘀16例、陰液虚26例、水滞10例、寒17例、熱16例であった。口臭症の弁証を総合すると、肝胆気虚14例、脾胃血虚10例、肝胆血瘀9例、脾胃気虚8例、心肺気虚7例、脾胃気滞7例と続いた。
口臭症の舌診所見を集計した報告はほとんど見当たらない。今回の研究により、口臭症の舌診所見の特徴を明らかにすることができた。加えて、東洋医学的な弁証を行うことにより、口臭症を東洋医学的に分類することができた。
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