アジア予防歯科学会は、英語で「Asian Academy of Preventive Dentistry(AAPD)」と表記される、予防歯科分野における国際学会です。2年に1度、アジアのいずれかの都市で開催されますが、第8回総会(2008年11月)は韓国・済州島で行われ、本田俊一先生ならびにほんだ式口臭治療認定医療機関の先生方とともに学会に参加し、英語で口演発表を行いました。
発表内容は、生理的口臭の主な発生源である舌苔と、舌苔中で口臭を発生させる嫌気性細菌の動向についてです。進行した歯周病患者や寝たきり老人に見られる口臭、すなわち病的口臭についてはかねてから様々な研究や発表が行われてきましたが、最近顕著な増加が見られる生理的口臭に関する研究や発表は、限られたものしか存在しません。つまり、ほんだ歯科および提携クリニックを受診される患者様
の多くが生理的口臭に悩まされていながら、治療の参考となる研究はまだまだ少ないのが現状なのです。
以上の経緯から、ぜひ自分で調査してその結果をまとめ、今後の診療に役立てていこうと思い立ちました。もちろん調査や集計の作業は大変手間がかかるため、日々の臨床業務の中で実行するのは困難なことではありましたが、今回の学会発表がとてもよい機会となりました。
本学会では、ほんだ歯科提携クリニックの先生方が多様な視点からユニークな発表をされましたが、私が一番知りたかったことは、「生理的口臭の発生元である舌苔中の嫌気性細菌は口臭治療によって本当に減少していくのか?」という点です。嫌気性菌は酸素を嫌うことから調査がとても難しく、嫌気培養システムという大掛かりな設備が必要となるため、従来では開業医はお手上げ状態でした。ところが、幸いにもBANAぺリオという簡易測定器が開発され、嫌気性菌の動向を調べることが比較的容易に行えるようになったのです。そこで、BANAぺリオを用いて口臭患者の嫌気性菌を測定した結果、口臭治療の前後で舌苔中の嫌気性菌が減少するという結果が判明したため、このテーマを中心に発表する運びとなりました。
今回は、参加者のほとんどが英語を母国語としないアジア圏の歯科関係者であったため、(英語での)活発な質疑応答には至らなかった点が残念でしたが、会場がリゾート地の最高級ホテルだったため、ゆったりとした気分で学会期間を過ごすことができました。また、滞在中は二晩続けて晩餐会の催し物を楽しむことができたと同時に、国内の学会では見られない研究者同士の絆を感じることができ、思い出に残るであろう意義ある旅となりました。 (院長 樋口均也)
|