日本口臭学会10周年記念学術大会において研究発表を行いました
2019年7月13日・14日の2日間、日本口臭学会10周年記念学術大会が東京都で開催されたなか、13日午後に口頭発表を行いました。
口臭症患者にみられた治療後の気分変化
○樋口均也1),梅﨑さおり1),本田俊一2),前田伸子3)
1) 医療法人慶生会 ひぐち歯科クリニック,2) 医療法人ほんだ歯科,
3) 鶴見大学歯学部口腔微生物学講座
【目的】
口臭症患者において、口臭の悩みを抱え続けていることが患者の気分に影響することを経験する。これまでにも口臭症患者の気分についての報告が散見されるが、治療によりどのような変化が生じるかを多数例で検討した報告はまだない。質問紙形式検査の1つである気分プロフィール検査(POMS)は「緊張―不安」「抑うつ」「怒り―敵意」「活気」「疲労」「混乱」の6つの気分を測定することができる。我々はPOMSを用いて口臭症患者の気分を測定し、治療によってどのように変化するのかを検討した。さらに、主観的な口臭についてはVisual
Analogue Scale for Anxiety(VAS-A)を分析し、客観的な口臭については官能試験および簡易ガスモニターによる測定を実施することにより、口臭症治療の効果についてもあわせて評価した。
【対象と方法】
口臭を主訴としてひぐち歯科クリニックを受診した口臭症患者196名(男性51名、女性145名、平均年齢±標準偏差41±13歳)にPOMSを記入してもらい、得られた素得点から標準化得点(T得点)を求めた。対象患者に認知行動療法と二酸化塩素製剤の含嗽などにて口臭症を治療し、治療前後のPOMS、1日4回のVAS-A、官能試験、および簡易ガスモニター(BBチェッカー)による機器測定を実施した。そして測定結果を統計学的に解析することにより、口臭症治療が気分および主観的・客観的口臭に及ぼす影響について検討した。
【結果】
治療後のPOMSのT得点は「緊張―不安」「抑うつ」「怒り―敵意」「疲労」「混乱」が低下し(いずれもp<0.01)、「活気」には有意な変化が見られなかった。起床直後、昼食前、夕食前、就寝前のVAS-Aは治療後に低下した(いずれもp<0.01)。口腔内ガス、呼気ガスの官能強度は治療により低下し、呼気ガスの最大感知距離も縮小した(いずれもp<0.01)。治療後の口腔内ガス、呼気ガスのBBチェッカー値は治療前と比較して有意な低下を認めた(いずれもp<0.01)。
【考察】
口臭症患者が「口臭に悩んでいることを理解してもらえない」「口臭がなぜ起こるのかわからない」「どうすれば口臭をよくすることができるのかわからない」という悩みを抱えていることを経験する。このような悩みが不安や落ち込み、イラつき、混乱といった気分をもたらすと考えられる。口臭症治療により、患者の「緊張―不安」「抑うつ」「怒り―敵意」「混乱」といった気分が
改善することが明らかとなった。主観的な口臭と捉えることができるVAS-Aの結果が上昇したこと、客観的な口臭である官能検査の結果やBBチェッカー値が低下したことから、口臭症治療により患者の口臭が改善したことが明らかとなった。したがって、口臭の改善に伴う治療効果の一面として、これら4つの「よくない」気分も改善したと考えられた。
【結論】
口臭症治療により、主観的にも客観的にも口臭が改善された。これに伴い、患者が抱えていたよくない気分も改善された。
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