第16回 日本口臭学会において研究発表行いました
2025年6月28日・29日の2日間、第16回 日本口臭学会が名古屋市で開催されたなか、28日午後に口頭発表を行いました。
口臭治療前後における慶大式自己臭症(口臭)質問票の得点の変化
Changes in scores of Keio Self-rating Questionnaire for patients complaining of foul breath before and after halitosis treatment
〇樋口均也、梅崎さおり
医療法人慶生会ひぐち歯科クリニック
【目的】
口臭治療の効果を判定する指標には、官能強度や簡易ガスモニターの計測値がある。口臭患者の多くが抱いている口臭恐怖やそれに伴う関係念慮については、慶大式自己臭症(口臭)質問票を用いることで計測が可能であり、治療効果の判定にも利用できると推測できる。しかし、慶大式自己臭症(口臭)質問票を用いた口臭治療の前後の得点の変化については、多数の患者を対象として調査した報告は見当たらない。そこで本研究では口臭治療の前後における慶大式自己臭症(口臭)質問票の得点の変化を調べ、その特徴を明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】
2018年6月から2024年8月までの間にひぐち歯科クリニックで口臭治療を実施した患者83名を調査対象とした。カルテ記載をもとに、性別、年齢、自己記入式うつ尺度(SDS)、状態不安―特性不安(STAI)、慶大式自己臭症(口臭)質問票の結果を集計した。治療前後の得点の比較にはウィルコクソンの符号付順位検定を用いた。
【結果】
口臭治療により、口腔内ガスの官能強度、BBチェッカー値が有意に低下した。SDS、STAIも有意に低下した。慶大式自己臭症(口臭)質問票の得点も低下した。「家族、友人、同僚、偶然居合わせた知らない人の誰でもよいのですが、そのような人があなたの口臭に対して直接言葉で注意せず、陰でコソコソと言っていることがありますか」の質問に対する改善率が他の質問よりも高い傾向にあり、「口臭は自分でわかりますか、手を口にもっていき、息を吹きかけて、鼻で息を吸うとどうですか」「口臭は自分でわかりますか、手を口にもっていったりせず、普通にしている時はどうですか」の質問に対する改善率が他の質問よりも低い傾向にあった。
【考察】
口臭治療により口臭強度が低下し、抑うつや不安も軽減した。同時に慶大式自己臭症(口臭)質問票の総得点や各質問項目の得点が低下した。他人が自分の口臭の噂をしているとする関係念慮に関する質問に対する改善率が高い傾向にあったこと。この結果から、口臭に対する認識は変化し得るもの、改善し得るものであることが示された。客観的な口臭強度が低下したにもかかわらず、口臭は自分でわかりますかとの質問に対する改善率は低い傾向にあった。この結果からは口臭が減弱しても、弱くなった口臭を敏感に感じ取る患者が一定数存在することが推測された。
【結論】
口臭治療により、客観的な口臭強度の低下と心理面の改善が確認された。心理面に関しては、慶大式自己臭症(口臭)質問票により、口臭恐怖やそれに伴う関係念慮の改善が評価できることが明らかとなった。

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