第29回 日本歯科心身医学会において研究発表を行いました
2014年7月26日・27日の2日間、第29回 日本歯科心身医学会が横浜で開催されたなか、26日午後に口頭発表を行いました。
口臭患者が持つ不安への対応
- ○樋口均也1)、本田俊一2)
- 医療法人慶生会 ひぐち歯科クリニック1)、
- 医療法人 ほんだ歯科2)
【目的】
歯科を受診する患者にはしばしば客観的な口臭が認められ,その多くに歯周病などの病的な原因が観察される.このような臭気への対策が必要な一方で,口臭に悩む「口臭症」の患者自体を治療対象とする必要もある.というのも,口臭症患者の多くは口臭の臭気レベルが低くて客観的評価が困難な上,器質的な原因が見出せない生理的口臭症である場合が多いため,臭気を軽減させる治療法のみでは対応が難しいからである.口腔清掃状態が比較的良好な生理的口臭症の患者では,口臭に対する不安の原因は口臭そのものではなく,付随する不快症状や会話相手の反応に関する認知の歪みであるケースが多い1),2).こういった不安はいわば主観的な口臭と捉えることができる.生理的口臭症に対しては,口臭不安という情動,口腔内感覚の異常や他人の仕草に対する自動思考,他人と会話する際の回避行動といった問題点への対応が必要となる.本研究では口臭症に対する認知行動療法的手法の有効性を検討した.
【調査対象】
2005年10月より2014年4月までの期間中,口臭を主訴としてひぐち歯科クリニックに来院した428名のうち,3回に渡る口臭関連検査を実施した261名を調査対象とした.口臭に関する検査として,官能検査や簡易ガス測定器による検査,嫌気性菌の生理活性の検査,唾液の生理的検査を実施した.併せて生活調査票やvisual
analogue scale for anxiety(VAS-A)の記入をさせた上で,病態説明に次いでマウスウォッシュなどを用いた臭気対策を指導した.口腔内感覚の異常や他人の仕草への不安に対する認知の修正や行動療法も併せて実施した.
【結果・考察】
口臭に関する不安を覚える理由を尋ねてみると,口が乾く,口の中がネバネバするといった口腔内感覚の異常を訴えたり,鼻をこするといった他人の仕草が気になったりする患者が多くみられた.3回の口臭治療により主観的な口臭の強度(VAS-A)が有意に低下した(p<0.051).また官能検査にて客観的な口臭の程度も有意に低下した(p<0.01).生理的口臭を客観的に評価することや治療することは従来,困難であるとされてきた.我々は生理的口臭症に対してその評価方法を確立し,臭気を軽減させ,口腔生理機能を整える治療法を実践してきた3).その結果,主観的にも客観的にも口臭の改善を認めた.口臭症の治療に際しては臭気の軽減だけではなく,口臭患者が持つ不安への対応が重要であると考えられた.
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