第6回 日本口臭学会において研究発表を行いました
2015年7月4日・5日の2日間、第6回 日本口臭学会が新潟で開催されたなか、5日午後に口頭発表を行いました。
コーヒーを飲んだ後は口臭が強くなる
- ○樋口均也1),梅﨑さおり1),本田俊一2),前田伸子3)
- 1) 医療法人慶生会 ひぐち歯科クリニック,2) 医療法人ほんだ歯科,
3) 鶴見大学歯学部口腔微生物学講座
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【目的】
口臭は飲食物の影響によって生じる場合があり、口臭症患者の中には「コーヒーを飲んだ後が特に気になる」という者が少なからずいる。口臭の原因物質を産生する嫌気性菌に対して、コーヒーが何らかの影響を与え、口臭が強くなる可能性が考えられる。コーヒーは酸性度が高く、また自律神経への作用があるため、口腔内のpHや唾液分泌量を変化させることが推測される。このために口臭が強くなると患者が感じるのかもしれない。一方で、コーヒーが口腔細菌の増殖を抑制し、代表的な口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物の産生をも抑制するというin
vitroでの報告もある。今回我々はコーヒー飲用前後の口臭の変化を経時的に測定し、その影響を調べた。嫌気性菌の加水分解活性や唾液の分泌量、性状を併せて計測し、コーヒーがどのような理由で口臭を悪化させるのかについても分析を加えた。
【対象と方法】
20歳から35歳までの男性5名、女性10名、計15名の健康成人を調査対象とした。コーヒーと対照の水を各1回飲用する実験をクロスオーバー法にて行った。実験に先立って口腔衛生指導及び歯石除去を実施し、歯周組織に問題がない状態で実験を開始した。実験にはインスタントコーヒー(ネスカフェ ゴールドブレンド)100mlを用い、甘味料などは加えなかった。対照の水も同量の100mlとした。コーヒー飲用前、飲用15分後、60分後、120分後に官能検査及び機器測定(BBチェッカー、オーラルクロマ)にて口臭の強さを測定した。さらに代表的な口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物を産生する嫌気性菌の加水分解活性についてBANAペリオを用いて各4回測定した。また、唾液の分泌量や性状についても各4回測定した。
【結果】
官能検査において、コーヒー摂取後の官能強度や最小感知距離は摂取前より高い値を保つ傾向にあった。一方で、水摂取後は摂取前より官能強度が低下する傾向にあった。コーヒーと水を比較すると、口腔内ガスおよび呼気ガスの官能検査では、コーヒー摂取15分後、60分後において、対照群と比較して官能強度が高く、最小感知距離が長かった。また、コーヒー摂取2時間後の官能強度も高かった。BBチェッカーを用いた機器測定では、コーヒー摂取120分後の口腔内ガスが対照群より高かった。BANAペリオを用いた嫌気性菌の加水分解活性は、コーヒー摂取120分後の時点で舌背部のBANAテスト値が対照群より高かった。コーヒー摂取120分後の刺激時唾液pHは対照群より低下していた。
【考察】
官能検査においても簡易ガス測定機においても、コーヒー摂取後は水摂取と比べて口臭が強くなることが明らかとなった。コーヒーは舌背部に残りやすく、舌苔中の嫌気性菌を活性化させたことが推測された。また、コーヒー摂取後に唾液pHの低下がみられたことより、これが嫌気性菌の活動に何らかの影響を与えた可能性や口臭症患者の口臭不安を増強させた可能性が考えられた。
【結論】
コーヒー飲用後に口臭が増強されることが示された。また、コーヒーが舌背中の嫌気性菌の活動や唾液pHに影響を与えることが明らかとなった。
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