目的
唾液には抗菌作用があるため、唾液分泌量が低下するシェーグレン症候群患者はう蝕や歯周病に罹患しやすく、増悪しやすいと予想される。しかしながら、本邦におけるシェーグレン症候群患者のう蝕や歯周病に関する報告は少なく、その実態については不明な点が多い。本研究ではシェーグレン症候群患者の口腔乾燥とう蝕や歯周病との関連を明らかにすることを目的とし、調査を実施した。
対象と方法
2005年8月~2021年12月に当院を受診した患者を調査対象とした。カルテ記載をもとにして当院で検査を実施し診断したシェーグレン症候群の患者(SS群)を抽出した。患者の年齢、性別、唾液分泌量、口腔粘膜湿潤度、DMF歯数、歯周ポケットの深さ、プロービング時の歯肉出血を調査項目とした。対照は令和4年度歯科疾患実態調査(実態調査群)の同様の調査項目とした。
結果
SS群は女性が多く、平均年齢57.3歳であった。無刺激唾液分泌量は平均0.06mL/分、口腔粘膜湿潤度は26.8と低い値であった。「う蝕を持つ者(D歯数+F歯数)」の比率は実態調査群と比してSS群が有意に高かった。「4mm以上の歯周ポケットが見られる者」「6mm以上の歯周ポケットが見られる者」「歯肉出血を有する者」の比率は、実態調査群と比してSS群が有意に高かった。
結論
シェーグレン症候群患者は女性が多く、年齢が高く、ドライマウスが生じていた。ドライマウスはう蝕や歯周病になりやすいことが示唆された。
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